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最高裁判所第二小法廷 昭和31年(オ)123号 判決 1958年5月23日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人近藤与一の上告理由第一点の論旨は、公正証書の作成につき消費貸借の実体上の効力と執行受諾の意思表示の効力に関し民法一一〇条の適用の有無を区別した原判決の判断は違法であると主張する。

しかし、公正証書に記載される「直チニ強制執行ヲ受ク可キ旨」の意思表示は、公証人に対してなされる訴訟行為であるから、私人間の取引の相手方を保護することを目的とする民法一一〇条の適用又は準用のないものと解すべきことは当裁判所の判例とするところであつて、今これを変更する要を認めない(昭和三二、六、六日第一小法廷判決、集一一巻七号一一七七頁、なお大審院昭和一一、一〇、三日判決、集一五巻二〇三五頁、昭和一九、九、二九日判決、集二三巻五六三頁参照)。従つて原判決の判断は正当であつて、所論は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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